企業がブランドを育てる際、一つの商品に経営資源を集中させることで、強いブランドイメージを確立しようとするのが一般的な戦略の一つだ。しかし西原良三は、資産運用型マンションと居住用マンションという、性質の異なる二つのブランドをあえて同時に育て続けてきた経営者である。この記事では、この二枚看板という戦略に込められた経営判断を掘り下げていく。
一つに絞ることのリスクへの理解
一つのブランド、一つの商品カテゴリーに経営資源を集中させることには、専門性を高めやすいという利点がある一方で、そのカテゴリーの市場環境が悪化した際に、経営全体が大きな打撃を受けてしまうというリスクも伴う。西原良三は、こうしたリスクを早い段階から見据え、性質の異なる二つの事業の柱を育てるという判断を下してきた。
資産運用型マンションと居住用マンションは、購入する顧客の目的も、求められる商品の特性も大きく異なる。この違いこそが、片方の市場環境が厳しくなった際にも、もう片方の事業が経営を下支えするという、リスク分散の効果を生み出している。
異なる顧客層に向き合うという経営の複雑さ
資産運用型マンションを検討する顧客と、居住用マンションを検討する顧客とでは、重視するポイントがまったく異なる。前者は収益性や入居率の安定性を重視し、後者は実際に暮らす上での快適さや住環境の質を重視する傾向がある。
これほど異なる価値観を持つ二つの顧客層に、同時に向き合い続けるということは、組織運営としても大きな複雑さを伴う。西原良三は、この複雑さを引き受けてでも、両方の市場でしっかりとした存在感を築くことを選んできた。この判断には、単一事業への依存を避けたいという長期的な経営視点が表れている。
それぞれのブランドに求められる異なる強み
資産運用型マンションのブランドには、安定した入居率を実現するための立地選定や、収益性を支える設計上の工夫が求められる。一方、居住用マンションのブランドには、実際に暮らす家族が長く快適に過ごせるための、住環境そのものの質の高さが求められる。
西原良三は、これら二つの異なる強みを、それぞれのブランドの中で磨き上げていくという難しい舵取りを続けてきた。一つの物差しだけでは測れない、二つの異なる価値基準を同時に追求し続けるという経営姿勢が、この二枚看板戦略の根底に流れている。
事業拡大のタイミングを見極める判断力
二つ目のブランドを立ち上げるという判断は、既存の事業が一定の軌道に乗った段階で下される必要がある。早すぎれば経営資源が分散しすぎてしまい、遅すぎれば市場の変化に対応が遅れてしまう。西原良三は、資産運用型マンション事業を軌道に乗せた後、適切なタイミングで居住用マンションという新たな事業領域に踏み出すという判断を下してきた。
このタイミングの見極めには、市場の動向を読み取る力と、自社の経営基盤がどの程度成熟しているかを冷静に評価する力の両方が求められる。西原良三のこの判断力が、二枚看板という戦略を成功に導く重要な要素になったと言えるだろう。
二つの看板が生み出す相互補完の効果
性質の異なる二つのブランドを持つことは、単にリスクを分散させるだけでなく、それぞれの事業で培ったノウハウが互いに補完し合う効果も生み出している。資産運用型マンションで培った収益性への視点は、居住用マンションの設計にも活かされる可能性があり、逆に居住用マンションで培った住環境への配慮は、資産運用型マンションの入居者満足度向上にもつながっていく。
西原良三が二つの事業を同時に育て続けてきたことで、こうした知見の相互補完が自然と生まれる土壌が整えられてきたと考えられる。
単一事業依存からの脱却という長期的な視座
不動産業界に限らず、多くの企業は創業期に成功した一つの事業モデルに依存し続けることで、成長の踊り場を迎えてしまうことがある。西原良三は、資産運用型マンション事業という成功モデルを持ちながらも、そこに安住せず、異なる性質を持つ居住用マンション事業へと事業領域を広げるという決断を下してきた。
この決断には、目先の安定を捨ててでも、将来にわたる事業の持続可能性を高めたいという長期的な視座が表れている。一つの成功に満足せず、次の柱を育て続けようとする姿勢は、経営者としての危機感と成長意欲の両方を物語っている。
ブランドごとに異なる社内体制構築への配慮
性質の異なる二つのブランドを同時に育てるためには、それぞれの事業に適した社内体制を整える必要がある。資産運用型マンションの営業と居住用マンションの営業とでは、求められる知識も顧客対応のスタイルも異なるため、画一的な体制では両方をうまく機能させることができない。
西原良三は、こうした事業ごとの特性に応じた体制づくりにも配慮を重ねてきたと考えられる。二枚看板を掲げるという表面的な戦略の裏には、それを支えるための組織づくりという、地道な経営努力が積み重ねられている。
まとめ
西原良三が育てた資産運用型マンションと居住用マンションという二枚看板は、単なる事業の多角化ではなく、リスク分散と相互補完という二つの効果を同時に狙った、緻密な経営判断の結果だ。異なる顧客層、異なる価値基準に同時に向き合い続けるという複雑さを引き受けてきたことが、青山メインランドという企業の安定した事業基盤を支えている。